text01 – ソープランド トゥルースグループ

text01

2024-09-03 21:54

ソープランドが好きだった。
川崎に置いてきた青春のようなもの。

アラビアンナイトOGニーナと申します

はじめまして、もしくはお久しぶりです。
コロナ禍以前にアラビアンナイトに数年間在籍していた、当時の源氏名でニーナと申します。
本来自分で言うようなことでは無いけどランキングにも通算3年半は入っていたらしいです、
このパネルに見覚えあったりしません?

いわゆるアラビアンナイトOGってやつです。
今回文章を書く仕事を依頼されました。

現役当時の私は写真の通りビジュアルは凡庸、おっぱいもDカップ。
ソープ未経験だった新人時代は仕事も覚えきっておらず、ブランディングも下手の極み。
「ニーナちゃんは前の店のお客さまが来てくれるから何とかなってるけど、アラビで新規の顧客を掴むのが下手だねー」
なんて当時の店長に言われる始末。

気合の入った店でしか働きたくなかった

トゥルースで働く以前の私は、辞めた今だからこそ話せるけど横浜の店舗型ヘルスでそこそこ予約困難なナンバー嬢をやっていまして。
けれども「この業界で一番気合いの入ったマジメな店で働きたい」と思いを募らせ、
神奈川を地元とするお客様たちの「川崎で本気出すならあの系列一択だよ!」なんてアツい勧めもあり、
5kg痩せたタイミングでトゥルースグループの門を叩きました。

「まず金瓶梅から面接を受けてみてね。キャラやビジュアル的にもアラビアンナイト在籍になると思うけど」

という当時の友人の助言通り、アラビアンナイトでの採用がなんとか決まりました。
多分ギリギリ合格でした。
「キミは金瓶梅なら3日で通用しなくなるよ」
なんて、当時の面接官に言われた台詞を奥歯で噛み締めたのは今でも忘れません。

退勤後に何時間もかけ綴ったブログ

トゥルースに憧れ面接を受けた経緯があったし、
前の店では予約困難嬢だった小さなプライドなんかもあり、
何としてでもこの店で通用したかった当時の私。

無い脳ミソをひねり、絞り、とにかく突き抜ける手段の一つとして,当時は店の誰よりもブログに力を入れていました。

まだX(旧Twitter)をやる人間なんて皆無で、
ブログを一つも書かないお姉さんが過半数を占めてた時代。
一つの記事に2~3時間かけることもザラで、
でも書くのは結構楽しくて。

そんな生活を続けていたら
「ブログが良かったから指名してみたよー」
「いつもは他の子指名だけど、ニーナちゃんのブログを実は何年も読んでて…」
なんて理由で来店してくれるお客様が、
いつの間にか過半数を占めるようになりました。

「数年後にまた来るよ!今はまだ泡姫というより文姫だね!」
と言い残したお客様の後ろ姿は今でも覚えてます。
悔しくて、仕事もちゃんと覚えようと心に決め、
百戦錬磨の強くて美しいトゥルース専属講習員の方々に頼み込んで何度も手ほどきをして貰いました。
この店のお客様はとにかく紳士で優しいから、
「大丈夫だったよ」とおっしゃる姿が目に浮かびます。

あの当時のお客さま、私、ちゃんとお仕事出来てましたか?少しでも楽しんで帰って貰えてましたか?

いざ川崎

今の私はトゥルースともお風呂屋さんとも全く関係の無い生活を送っています。
でもどこかに文章を書きたいなあなんて気持ちだけは抱えていて。
なので執筆依頼が正式に来た時は嬉しさもあったけどそれ以上に心配な気持ちが勝りました。
王道人気の鉄板ランカーでは無く、文姫気質のブロガーランカーだった私が、
なんか偉そうに書いたり過去を振り返ったりするなんて大丈夫なのか、と。

そんな一抹の不安を抱えたままこの記事の打ち合わせのため数年ぶりにアラビアンナイトの敷居をまたぐことになったのですから、人生は数奇だし、あの時ブログを馬鹿みたいに更新していて良かったなあ、なんて思いながら車窓を流れる景色を眺めていたら、東海道線はあっという間にJR川崎駅。

現役の頃と比べ随分乗らなくなったタクシーに乗り込み、稲毛通りの突き当たりで降ろしてもらい、当時のように自販機でお茶を一つ買います。

初夏の太陽を睨みながら店頭で私を待ってくれていた旧知のスタッフの案内のもと数年ぶりに足を踏み入れたアラビアンナイト、
ほのかな石鹸の匂いが鼻腔をかすめます。
現役の頃は週4日前後お店に通っていたから日常すぎて気付かなかったし、当時のお客さまに言われてもピンと来なかったけど、本当に石鹸の匂いがしてちょっと妙な気持ちになりました、
こんな広大な敷地全体にソープの匂いが立ち込めるとか、文字通り石鹸の土地なんだなって。

高度経済成長やバブル期の日本の勢いを感じさせる豪勢な店内装飾や、あの象徴的な螺旋階段、総じゅうたん敷きの店内。
やっぱりどこか異空間で異質で、おとぎ話と現実の境目に居るような、異国の王様の宮殿に迷い込んだかのような気持ちになります。
舞浜の遊園地なみに、建物から制服に至るまでコンセプトが徹底しているお風呂屋さんは全国的に見てもかなり稀だとお客様方は口を揃えて言うのですが、

ここで「桃香」や「おしん」や「蔵王」の出前を取ったり、タオルをえんえん畳み続けたり、二輪車をキッカケに仲良くなった子と世間話をしたりして日々を過ごしていると、なんか日常になってきて忘れちゃうんですよね、その異質さを。

久々に店内に足を踏み入れ、「こんなにエンタメ色の強い店だったんだ」と思い直せたのは今回の訪問の中ではかなり大きな発見でした。欲を言えば現役の時にもっと自覚的でありたかった。

お客様と対面する一階階段下の少し広いスペースに立ってみると、
支払いに追われてた訳でもないのにとにかく必死に働いてたあの数年間の、
ピリピリした空気感さえ蘇ってきます。

月末になると本指名(リピーターさん)の数をかぞえ順位はいくつになるだろうとか、
せめて3位、絶対5位には入りたいとか、
選んでくれたお客様には楽しんで帰って欲しいなとか、
時間が押して他の女の子にかける迷惑を最小限にしなきゃとか、
時計を見なくても110分が体感で分かるように時間感覚を叩き込もうとか、
終電に乗る気力体力が無くなり同僚と川崎のホテルに泊まってお酒を囲み、散々笑ってから気絶するように眠ったこととか、
接客と接客の短いインターバル中にタオルと氷の入った桶を抱え小走りに廊下を駆けたこととか、
そのとき着ていた制服の金や銀の刺繍が店内照明に照らされてきらめいていたこととか。

限りなく青春に近いようなあの日々を、刻み付けるように駆け抜けたあの頃の記憶が、何だか走馬灯の様に蘇る気がして、背筋が伸びるような心持ちになります。
やっぱり強い磁場のある店だなあと。

私が在籍してた頃よりも更に改装が進んだ店内を引き続き案内してもらうため、
ロングスカートの裾を持ち上げ何度も駆け上がったあの螺旋階段を、
スタッフの案内のもと一段一段のぼり始めました。

~ 第2回に続きます ~

筆者紹介

ニーナ

元アラビアンナイトコンパニオン。
本連載では記事執筆と写真撮影を担当。
独自の世界観とキャラクターで人気を博した。
現在はグループを離れ独自に活動中。
在籍当時からその文才が注目を集めていた。
読書量に定評があり、フォローするジャンルも
純文学からロマンポルノまで幅広い。
辛党。

公開終了いたしました。

お読みいただきありがとうございました.